「何も欠けることはない」　０２．０１．２０
　　　　　　　　　　　　　　　　　　詩編２３：１〜６、ヨハネ１０：２７〜２８

　「主は羊飼い」といわれます。この御言葉は、「私はあなたの羊飼いだ」と言う、
神の宣言です。私たちは、「主は私の羊飼いでいてくださる」と自信を持って
告白するよう招かれています。自分のことを飼う者のいない羊のようだなどと
思う必要はありません。罪と死へ迷い出た羊を、ご自分の血を流すことで
引き戻してくださった主イエスを知っているからです。

　詩編２３編には「何も欠けることがない」、「青草の原」、「いこいの水のほとり」と
言った、のどかな光景が出てきます。しかし、私たち自身のおかれている状況や、
周りに見える現実は、欠け多く、行き詰まりと荒れ野が広がっているように見え、
死の陰の谷の方がふさわしく思えます。そして、この死の陰の谷のような現実が
どこまで続き、どこに抜けるのかは、誰も答えることができないのです。
私たちは、深い死の陰の谷で、うずくまって動けなくなりそうです。

　先ののどかな光景は、深い死の陰の谷の現実から出てきたものです。
そこで動けなくなり、静かにするしかできなかった人の言葉です。
もはや、動くこともできず、神を思うしかできなくなったそのときに、その人は
神を発見します。神は、羊飼いのように動き回ってくださる神だと知らされたのです。

　主なる神はじっとしている神ではありません。羊飼いのように一緒に歩き回って
憩いの水のほとりまで導く神です。伴い、導き、休ませる。いずれも、
じっとしていてはできないことです。「鞭」、それは羊をたたくものではなく、
羊を襲う獣と戦うための道具です。羊の敵と命がけで戦う羊飼いのような
主なる神の姿を知らされるのです。

　主なる神は、じっとしておられるのではありません。
時には、羊の気付かない所でも戦い、動き回っておられる。
　その神を信じるゆえに、たとえ死の陰の谷を歩んでいるとしても、
静かな信頼を持って進めます。この谷を、私の羊飼いが抜け出させてくださる
ことを信じて進めます。